隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話
「いーち、にーい……」
かなり遅い30秒を数えていると
「犬じゃあるまいし……」
鼻で笑ったような声がリビングの扉から聞こえ、振り返ると知らない女性が立っていた。
黒のファーコートに
短めの黒のレースのワンピース。
ショートボブの黒髪に赤い唇。
大きな目をした綺麗な人。
「さくらぁ」
彼女は甘い声を桜ちゃんに出し、綺麗な足を曲げて腕を伸ばすと
「あんなちゃん」って
桜ちゃんはその腕の中に飛び込んだ。
誰?桜ちゃんの知り合い?
「元気だった桜?」
「あんなちゃんいつきたの?」
「昨日だよ。桜に会いに来た」
そう言うと
桜ちゃんは笑う。
何か疎外感。
どうしていいかわからないでいると
紀之さんが彼女の後ろからリビングに入って来た。
「僕より先に入るなって」
「いいじゃない」
慣れた会話をしていたので、ジッと彼を見ていると
「郁美さん。こちら僕の幼なじみで、いとこの田辺杏奈です」
やっと紹介してくれて、私は頭を下げると、そのいとこは桜ちゃんを抱きながら
「これが紀之の?なんかイメージ違う」って言われた。
親戚だけど
嫌な感じ。