隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話
田辺さんなお洒落な物置の前で、小さな自転車を磨いていた。

近所の佐藤さんからもらった自転車。

【みんなに助けられて生きてます】
田辺さんが選挙に立候補したら
そのポスターに書き込みたい言葉。

「勝手に入ってすいません」
素直に謝ると

「とんでもない。郁美さんならいつでも大歓迎です」
桜ちゃんと同じ笑顔で、私に向かってやってきた。

「母がちらし寿司を作ったので、中に置いてきますね」
作業中の田辺さんを気にして
私は家の玄関に向かおうとしたけれど

ふと
足を止めてしまった。

言わなくていい
私には関係ない
余計なお世話

あぁ
でも桜ちゃんのあの表情を見ると
どうしても口から出てしまう。

「桜ちゃんはお母さんに会えないのでしょうか」
きっと私は
責めるような目で
怖い顔をしてるだろう。

「どんな理由で別れたのかはわかりませんが、桜ちゃんはお母さんが恋しいんです。会いたがってます。親の理由で母親に会えないなんて、かわいそうだと思いませんか?」

一気に言うと
田辺さんは困った顔をしてから、大きく深呼吸。

そして
「座って待ってて下さい」と、言って私から重箱を奪い家の中に入る。

だから私は

不安定な気持ちのまま
白いベンチに座って

桜の樹を見上げ

また余計な事を言ってしまったかも……桜の精霊に相談しても、花びらが舞うだけだった。
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