溶ける温度 - Rebirth -
「冗談でそんなキザなこという30歳って、いると思う?」
「…まあ、そうだけど」
というか。マスターと同い年だってことを伝えただけで、よくも年齢がぱぱっと分かるよなあ。
そんなことを漠然と思った私の前で、美弥は頼んだクリームパスタをくるくると巻きつけていた。
そしてそれを一口ずつ食べながら、次々に浮かんでくる疑問を咀嚼しながら消化しているよう。
「マスターとの旧友で、フランス帰り、商社マン、甘い誘い文句に、去り際に名刺かあ」
「…よくもうまく一行でまとめるよね」
「当たり前でしょ。私の除法処理能力なめるんじゃないわよ」
美弥はどこか自慢げに笑ってみせると、それでさ、と再び言葉を続けていく。