溶ける温度 - Rebirth -
さすが心配性な彼女は、この激動の一か月の発端となった出来事をずっと気にかけてくれているのだ。
「……満さんのこと、思い出しちゃうからじゃないの?」
確信に迫るその言葉を言われてしまえば、素直にならざるを得なかった。
「…ちょっとはね」
「……だよね。まさか同じ会社なんて、神様も試練を与えてくるよね」
そう。
実は昨日の会話を整理した上で導き出した、彼が繊維商社勤めであるという予測したときには。
元彼と同じ業界で働いているんだな、ぐらいにしか思っていなかったのだけれど。
頂いた名刺に記されていたその企業名をみたとき、まさかのまさか、同じ勤め先だったのだ。
さらなる偶然の重なりに、そのときばかりは私もめまいを起こしそうだった。