溶ける温度 - Rebirth -

*

それから、美弥の携帯電話が鳴ったことでランチはお開きとなった。
電話の相手は彼氏のようで、私と話していた時よりも一段高くなった声のトーンとこぼれ出す笑顔にかわいいなと素直に思う。

美弥の彼氏が私を家まで送ってあげると嬉しい申し出をしてくれたけれど。
二人は休みのシフトが違うので、たまにしかないお互い一緒の休日を邪魔しないためにも、丁寧に断った。

ここ最近は一日も早く仕事に慣れたかった思いもあり、ランチタイムもディナータイムも仕事をしていたので、こうしてゆっくりと休日を過ごすのは久しぶりだ。
まだ少し肌寒さが残る季節だけれど、ショップのショーウインドウは春物が顔を出し始め、スーパーマーケットに行けば春の山菜が並びだしていた。

バスに乗って直行で帰宅することもできたけれど、今日は外の空気を吸いたい気分。

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