齧り付いて、内出血
私は法学部の学生で、懇意にしていただいている教授がいる。
その教授から突然連絡が入って都合が合うようなら来てほしいと呼び出されたのだ。
場所は大学内にある少し値段が高めのカフェテリア。
行ってみたらなんとそこにいたのだ。
『(煙草の人だ。)』そう思った。
「こちら教え子で現在弁護士の久世君だ。」
煙草の人に、名前がつく。
くぜ、くぜ、くぜ。
最短ルートで司法試験に合格した年若い弁護士。
その日は、教授が久世と約束があって、私が法曹を目指しているのを知っているからわざわざ呼んでくださったとのことだった。
久世も私に気づいたようだったけれどあくまで初対面のふりをしたから、私もそれに倣った。
あの久世が目を見開いて驚いてる姿なんて、この時くらいしか見たことがない。
そこから、なし崩しにこんな関係が始まったなんてことは、もちろん教授は知る由もない。