齧り付いて、内出血
しっとりと、包み込むように口づけられて何も考えられなくなる。
久世に触れられている時が、私は一番直でいられるのかもしれない。
余計なことを考えないですむから虚勢も意地も外聞も、全て捨て去れる。
「っ…!」
一瞬、久世がきれいな形の眉をぎゅっと寄せた。
それを見て、無意識に久世の長い人差し指を口に含んで噛んでいたことに気が付く。
痛みを堪えるその表情に、からだが熱くなる。
指を銜えさせたまま、下がっていく。
「噛まれるの、俺結構好き。」
『このマ、ゾ…っ。』
「そういう強がりなとこ、可愛い。」
不思議。
‘可愛い’って、女の子を‘女の子’にする魔法の言葉だ。
ああ、胸が痛い。しめつけられる。
こんな苦しい思いしたくない。
ずっと逃げていたのに。
久世といるとどうしても逃れられない。