齧り付いて、内出血

「頼、行くぞ。」

『…いい。』

「何て?」

『行かないって言った。』


久世が、眉を寄せて明らかに意味が分からないと言いたげな顔をしてる。

当然だ。

言った自分でもわからない。

なんでこんなにもやもやするんだろう。

同じ事務所にいる女の子とご飯に行くなんておかしなことでもなんでもないし、そもそも他の人も一緒だったかもしれない。


この感情は、なに――?


「どうしたんだよ、腹痛いとか?」

『かも。』

「かも?」

『痛い。』


心が痛い。


「どこが痛む?」

『…。』


久世は何も悪くないのに、優しいのに。

沸騰しそうなくらいの怒りがこみあげてくる。

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