齧り付いて、内出血

‘岡部さん’は次々と可愛らしい言葉紡いでいく。

口を開けば不細工なことしか言えない私とは大違い。

――惨め。

気づけば私は地面のなんてことないコンクリートを見つめていた。


「どこか行かれるんですか?」

「そ、昼飯。」

「わあ、いいなあ~。シュウゴさん今度また連れて行ってくださいね!」


頭上を通過する言葉にぴくんと反応してしまった。

‘また’?


隣にいる久世を見上げたら、相変わらず普段と変わらない表情をしていた。


「ああ。」

「やった!――ではそろそろ失礼しますね。お邪魔してしまってすみません。」

「いや。」


ぺこりと会釈をして、ひらりひらりとスカートを揺らしながら去っていく‘岡部さん’を見つめてた。

ぐわんぐわんと、‘また’が何度も再生される。

< 37 / 91 >

この作品をシェア

pagetop