齧り付いて、内出血

久世の唇が顔中にキスを降らせて、首、鎖骨、と少しずつ降りていく。

癖なのか、片手を私に預けてくれたから、『いい』と返した。


「噛まなくて、いいのか。」

『だって痛いでしょ、もうやめる。』


「なーんだ、頼に噛まれんの好きなのに。」

『また言ってる。』

呆れた私に、


「だってそれ、お前の愛情表現だから。」


久世は平然とのたまった。


「気が強くて言いたいことの半分も口にできねえから、その分俺の手に齧り付くんだ。それに‘齧り付く’って、しがみつく、みたいな意味だろ?だから噛むことで言えない気持ちを表現してるんだって気づいた時、頼は俺のこと離したくないんだなー、と喜びに浸ってたわけ。」


『そ、そんな…』


「で、おまけに自分じゃそのことに気づいてない。そうやって、無意識で俺のこと求めてくるのがすげえ可愛いと思ってたわけです。」


『かわいいって、本気で言ってたんだ。』

からかってたわけじゃなかったんだ。

ということは、久世の発言はほとんど本心だったというわけで。

嘘ばかりついてややこしくしたのは私だったんだ。



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