苦恋症候群
あの宮信会の日から、2週間ほどが経った。

あれからいつも通り仕事をこなす日々で、まさに平凡な日常が続いているといった感じだ。

その間、私は何度かこの場所を訪れている。そしてそれは三木くんの方も同じらしく、2回ほど私たちは遭遇した。

そうしているうちに、自然とお互いが差し入れのようなものを持ってくるようになって。

もはやこの時間は、風と陽射しを感じながらのちょっとしたピクニックのようになっていた。


もらったエクレアをもぐもぐ咀嚼しながら、隣の整った横顔を盗み見る。

三木くんは私があげたコーヒーのストローをくわえたまま、ぼんやり街並みを眺めていた。


……私の、間で。

三木くんの家であった出来事は、完全に“なかったコト”にしている。

私は別に、彼と接するうえであのときのことをいちいち気にしてなんかいないし……彼の方だって、それまで以前と同じ『職場の後輩』としての態度で接してきている。まあ、たまに軽口をたたくのは相変わらずだけど。
< 106 / 355 >

この作品をシェア

pagetop