苦恋症候群
「や、でも、悪いですし」

「そんなことないよ。森下さんの家は、駅を少し越えたところだろ? 大丈夫大丈夫」



なんで知ってるんだこの人……。

なぜか自分の住所を知られていることにドン引きしながら、うまくこの誘いを断る方法を必死で考える。



「えっと、私とふたりで傘に入ったら、きっと副部長濡れちゃうと思うので」

「森下さん身体小さいから、平気だと思うけどー」



うるさいなあんたと相合傘するために小柄なわけじゃないんだよ…! ていうかいやらしい目でどこ見てんのよ!! セクハラで訴えるぞコノヤロー!!


あくまで表面は笑顔。だけど心の中では、目をつり上げた自分が田口副部長を糾弾している。

そうこうしているうち、「ほら、行こう」なんて言った副部長に腕を掴んだ。

瞬間、ぞわりと嫌悪感が身体中を駆けめぐって、私は硬直する。
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