苦恋症候群
とっさに何も言えずに黙り込んだ私を見て、ふっと葉月さんが目を伏せる。
それを眺めながら、現実逃避気味に『わーまつげ長ーい』なんて思ってみるけど、状況が変わるはずもなく。
また、葉月さんがゆっくりと話し始めた。
「あたしの同期が、見たらしいんです。宮信会の次の日の朝、三木さんが運転する車から、森下さんが降りるところ」
「え、と……」
「そのとき森下さん、前の日と同じ格好だったって。それってつまり、朝帰りしたって、ことですよね?」
最初の落ち着き払った様子から、徐々に口調が強くなっていく。
きっとこれは、ただの好奇心なんかじゃない。おそらく彼女は、三木くんのこと──……。
私は思わず頭痛を起こしそうなこめかみに1度片手をやってから、ふっと細い息を吐いた。
「えっと、うん、あのね。あれは私が宮信会の後、フラフラに酔っ払って家に帰れない状態だったから、三木くんが保護してくれたの」
「……保護?」
訝しげな視線を向ける葉月さんに、こくりとうなずいてみせる。
なんとなく、ニュアンスで一緒に飲んでたと思われないような言い方をしたのは……まあ、許容範囲でしょ。嘘を言っているわけではないし。
それを眺めながら、現実逃避気味に『わーまつげ長ーい』なんて思ってみるけど、状況が変わるはずもなく。
また、葉月さんがゆっくりと話し始めた。
「あたしの同期が、見たらしいんです。宮信会の次の日の朝、三木さんが運転する車から、森下さんが降りるところ」
「え、と……」
「そのとき森下さん、前の日と同じ格好だったって。それってつまり、朝帰りしたって、ことですよね?」
最初の落ち着き払った様子から、徐々に口調が強くなっていく。
きっとこれは、ただの好奇心なんかじゃない。おそらく彼女は、三木くんのこと──……。
私は思わず頭痛を起こしそうなこめかみに1度片手をやってから、ふっと細い息を吐いた。
「えっと、うん、あのね。あれは私が宮信会の後、フラフラに酔っ払って家に帰れない状態だったから、三木くんが保護してくれたの」
「……保護?」
訝しげな視線を向ける葉月さんに、こくりとうなずいてみせる。
なんとなく、ニュアンスで一緒に飲んでたと思われないような言い方をしたのは……まあ、許容範囲でしょ。嘘を言っているわけではないし。