苦恋症候群
「ハジメマシテ。さとりの元彼で~す」

「……どうも」

「あんた、よかったなあ。こいつは付き合ってるやつに尽くすタイプだから、すげー便利だよ」



にやにや笑いながらのそのセリフに、三木くんは眉ひとつ動かさない。

そんな彼の態度に、迅はまた不機嫌になったようだった。

再び、私へと身体を向ける。



「ああ、さとりもしかして──今度は、こいつを家に飼ってんの?」

「……ッ、」

「あんときは助かったわ。家遠いって言ったらすぐ家に上げてくれたし、そのまま住まわせてくれたし。すぐ、ヤらせてくれたし」



不躾な視線。人を見下すような話し方。

私は顔を上げていられなくて、ひたすら、地面を見つめる。


……こんなの、見られたくなかった。

三木くんに、見られたくなかった。


じわりと目の前が涙でにじむ。
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