苦恋症候群
そしてふと、あることに気づく。



「三木くん、なんか今日顔色悪くない?」

「そうですか?」



いつものすまし顔で即座に返答があったのが、逆に気になった。

……ほんとは調子悪いの、我慢してるんじゃないのかな。

だって見れば見るほど、三木くんの顔、いつもより青白いように思える。



「だいじょうぶ? 熱でもあるのかなー」



触れようと、思っていたわけではなかった。

だけどもつい私は、まるで友達にするみたいに、何気なくひたいに向かって片手を伸ばしていて。

そしてその手を、一瞬びくりと身体を揺らした彼によって、拒むように掴まれてから。

ハッとした私は、慌ててその手を引っ込めた。



「ご、ごめん」

「……いえ」



お互いに視線を逸らして、少しだけ気まずい雰囲気が流れる。


……ああ、だめだな。

今のは、“先輩と後輩”の、距離じゃなかった。


このまま、変わらなくていいと思っているはずなのに。

どうして無意識に、距離感を壊すようなことをしちゃうんだろう。
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