苦恋症候群
「お疲れさまです。柳井部長から、寺沢課長宛の書類預かってきました」
「あー、ありがとう」
そのまま会話を続けるふたりを横目に、私はこの場を後にしようとした。
だけどもうつむきがちにその脇を通り過ぎようとしたところで、後ろから声がかかる。
「あ、待って森下さん。……三木、この後もう帰るんだろ?」
呼び止めた声は山岸部長のもので、部長は私の名前を呼んですぐ、三木くんへと視線を向けた。
平坦な声音で「そうですけど」と返事をした三木くんの答えにうなずき、またこちらに顔を戻す。
「森下さん、今日はもう遅いから三木に送ってもらいなよ。たしかふたり、方向同じだろ?」
「えっ」
「え」
「最近、このあたりも物騒だし。女性がひとりで歩いて帰るのは危ないだろ」
「ああそうだね、三木くん、送ってあげて」
山岸部長のわりと真剣な言葉に、寺沢課長までうなずいた。
……たしかに、三木くんはカバンを持ってるし、昼間見かけたときは着ていなかったジャケットも身につけてはいる。
だから事務部に寄った後、このまま帰宅するつもりではいたんだろうけど。
「あー、ありがとう」
そのまま会話を続けるふたりを横目に、私はこの場を後にしようとした。
だけどもうつむきがちにその脇を通り過ぎようとしたところで、後ろから声がかかる。
「あ、待って森下さん。……三木、この後もう帰るんだろ?」
呼び止めた声は山岸部長のもので、部長は私の名前を呼んですぐ、三木くんへと視線を向けた。
平坦な声音で「そうですけど」と返事をした三木くんの答えにうなずき、またこちらに顔を戻す。
「森下さん、今日はもう遅いから三木に送ってもらいなよ。たしかふたり、方向同じだろ?」
「えっ」
「え」
「最近、このあたりも物騒だし。女性がひとりで歩いて帰るのは危ないだろ」
「ああそうだね、三木くん、送ってあげて」
山岸部長のわりと真剣な言葉に、寺沢課長までうなずいた。
……たしかに、三木くんはカバンを持ってるし、昼間見かけたときは着ていなかったジャケットも身につけてはいる。
だから事務部に寄った後、このまま帰宅するつもりではいたんだろうけど。