苦恋症候群
「あれ? 森下さん帰ったんじゃなかったの?」
「すみません、ちょっと忘れ物しちゃいましたー」
1日の業務を終えて更衣室で着替えを済ませた後、オフィスにスマホを忘れてきたことに気がついた。
声をかけてくれた同僚に返事をしながら自分のデスクを確認すれば、やはり引き出しの中から見慣れたスマホを発見。
そのときデスクの上の時計に目をやると、デジタル表示のディスプレイは20時過ぎを示していた。
この時間まで残っていたのは久しぶり。暗くなった窓の外を見て、早いところ帰路につこうと改めて思う。
「それじゃあ、お先に失礼します」
「はいよー」
「はーい、ご苦労さま~」
山岸部長や寺沢課長ののんびりした返事に小さく頭を下げながら、今度こそオフィスを後にしようとした。
そうしてデスクの島を通り過ぎたところで、不意に目の前にあるドアをノックする音が届く。
「失礼します」
「……ッあ、」
「あれ、三木くん。どうしたの?」
開いたドアの向こうから顔を覗かせたのは、三木くんだった。
まさか、私がまだ残っているとは思っていなかったのだろう。目が合った瞬間、彼は少しだけ驚いたように顔をこわばらせる。
だけどすぐに視線を外し、声をかけた寺沢課長に近づいた。
「すみません、ちょっと忘れ物しちゃいましたー」
1日の業務を終えて更衣室で着替えを済ませた後、オフィスにスマホを忘れてきたことに気がついた。
声をかけてくれた同僚に返事をしながら自分のデスクを確認すれば、やはり引き出しの中から見慣れたスマホを発見。
そのときデスクの上の時計に目をやると、デジタル表示のディスプレイは20時過ぎを示していた。
この時間まで残っていたのは久しぶり。暗くなった窓の外を見て、早いところ帰路につこうと改めて思う。
「それじゃあ、お先に失礼します」
「はいよー」
「はーい、ご苦労さま~」
山岸部長や寺沢課長ののんびりした返事に小さく頭を下げながら、今度こそオフィスを後にしようとした。
そうしてデスクの島を通り過ぎたところで、不意に目の前にあるドアをノックする音が届く。
「失礼します」
「……ッあ、」
「あれ、三木くん。どうしたの?」
開いたドアの向こうから顔を覗かせたのは、三木くんだった。
まさか、私がまだ残っているとは思っていなかったのだろう。目が合った瞬間、彼は少しだけ驚いたように顔をこわばらせる。
だけどすぐに視線を外し、声をかけた寺沢課長に近づいた。