苦恋症候群
そのときふと、通り過ぎようとした路地の暗がりで何かが動いた気がして私はパッと顔を向けた。
見るとそこには、こちらに背を向けてうずくまる男性の姿。なんだかひどく具合が悪そうに見えるその人物に、思わず足を止めた。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
ストールが暑くなってきて、しゅるりと緩めながらあまり光が届かない路地に1歩踏み入れる。
ぴくりとその背中が動いた気がしたけれど、返事がない。よっぽど体調がひどいのかと、さらに近づく。
「あの……」
肩に触れようと屈みかけたそのとき、鼻をついたのは濃いアルコールの匂いだ。
……この人、酔っ払ってる?
そう頭の中で考えた瞬間、唐突に振り向いた目の前の男性に、がしりと右手首を掴まれた。
突然のことに心臓がはね、身体がこわばる。
「ん~? ねえちゃん、店の人?」
焦点の合わない目でそんなよくわからないことを言われ、私はただふるふると首を横に振った。
どうしよう。この男の人、ただ酔っ払ってここにいただけなんだ。私の手首を掴む手の力は思いのほか強いし、どこかケガをしているようにも見えない。
男性は困惑する私に気づいていないらしく、何やらブツブツとひとりごとを言っている。
その人が口を開くたび、辺りに強いアルコール臭がただよった。
見るとそこには、こちらに背を向けてうずくまる男性の姿。なんだかひどく具合が悪そうに見えるその人物に、思わず足を止めた。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
ストールが暑くなってきて、しゅるりと緩めながらあまり光が届かない路地に1歩踏み入れる。
ぴくりとその背中が動いた気がしたけれど、返事がない。よっぽど体調がひどいのかと、さらに近づく。
「あの……」
肩に触れようと屈みかけたそのとき、鼻をついたのは濃いアルコールの匂いだ。
……この人、酔っ払ってる?
そう頭の中で考えた瞬間、唐突に振り向いた目の前の男性に、がしりと右手首を掴まれた。
突然のことに心臓がはね、身体がこわばる。
「ん~? ねえちゃん、店の人?」
焦点の合わない目でそんなよくわからないことを言われ、私はただふるふると首を横に振った。
どうしよう。この男の人、ただ酔っ払ってここにいただけなんだ。私の手首を掴む手の力は思いのほか強いし、どこかケガをしているようにも見えない。
男性は困惑する私に気づいていないらしく、何やらブツブツとひとりごとを言っている。
その人が口を開くたび、辺りに強いアルコール臭がただよった。