苦恋症候群
これからずっと、三木くんと会うたびにこんな思いをするのかな。

もう、1ヶ月以上も経つのに。いい加減慣れない自分に、腹が立つ。


そこでふと、思った。

……どうして私は、こんなに傷ついているんだろう。

三木くんとは、今年の4月に初めてまともな会話をした程度の浅い付き合いで。

ただの、会社の同僚。それだけの関係のはずなのに。



『あの男が言ったから、言うわけじゃないですけど──その浴衣、似合ってます』



そして不意に、あの花火大会の夜……広い背中から見た、少しふてくされたような三木くんの横顔が頭に思い浮かんで。

ぎくりと、胸がざわついた。


思わずその場に立ち止まり、右手でぎゅっと胸元を握りしめる。

気づいてはいけないものに、気づいてしまいそうな……嫌な、予感。

違う、と大きく声に出して否定したくなるような、そんな衝動。


……もしかして、私は──。
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