苦恋症候群
俺が、大学1年生の冬。
ひとり暮らしをしているアパートに、雪妃が泊まりに来ることになった。
高校に入ったあたりから、将来は父さんのような建築士になりたいと言っていた雪妃。
彼女は実家からほど近い父さんの母校だという大学に通い、そしてこの春から、市内の建築事務所への就職も決まっていた。
対する俺は、はからずも雪妃のおかげで跡継ぎというプレッシャーからは解放されて。地元を離れ、他県の私立大学に悠々と通っていた。
「……ふぅん。意外と、カノジョの物とか置いてないんだ」
ベッドの脇に大きめのトートバッグを置き、雪妃がしげしげとワンルームの部屋の中を眺める。
ここに来る途中で買ってきたジュースを冷蔵庫にしまいながら、俺は言葉を返した。
「まあ、彼女まだウチに来たことないし」
「そうなの?」
「彼女の家の方が、大学に近いんだよな。だからそっちばっか行ってる」
「へぇ」
パタン、と冷蔵庫を閉める。
大量のお菓子の入ったビニール袋をテーブルに置きながら、俺は雪妃に笑いかけた。
ひとり暮らしをしているアパートに、雪妃が泊まりに来ることになった。
高校に入ったあたりから、将来は父さんのような建築士になりたいと言っていた雪妃。
彼女は実家からほど近い父さんの母校だという大学に通い、そしてこの春から、市内の建築事務所への就職も決まっていた。
対する俺は、はからずも雪妃のおかげで跡継ぎというプレッシャーからは解放されて。地元を離れ、他県の私立大学に悠々と通っていた。
「……ふぅん。意外と、カノジョの物とか置いてないんだ」
ベッドの脇に大きめのトートバッグを置き、雪妃がしげしげとワンルームの部屋の中を眺める。
ここに来る途中で買ってきたジュースを冷蔵庫にしまいながら、俺は言葉を返した。
「まあ、彼女まだウチに来たことないし」
「そうなの?」
「彼女の家の方が、大学に近いんだよな。だからそっちばっか行ってる」
「へぇ」
パタン、と冷蔵庫を閉める。
大量のお菓子の入ったビニール袋をテーブルに置きながら、俺は雪妃に笑いかけた。