苦恋症候群
「──ねぇ、雪、積もってるよ」



それぞれお風呂を済ませて、洋画のDVDを観て。もうそろそろ寝ようか、と寝床の準備をしていると、カーテンの隙間から外を見た彼女がうれしそうに俺を振り返った。

俺は雪妃の布団を準備してやりながら、またゲッと嫌な声を漏らす。



「積もるとか……勘弁……」

「なんでー。綺麗でしょ、雪」

「そりゃ雪妃は、寒いの嫌いじゃないからいいだろうけど」

「うん、雪好き」



無邪気に笑って、彼女はまた窓の外に視線を向ける。



「だってさ、“雪”はあたしと同じ名前だから、味方って気がするんだよ」

「……単純」

「なによー。遥はこたつで丸くなってるねこっぽいわ」



不本意なその言葉には、無言を返しておく。

たしかに、雪妃はなぜかウィンタースポーツだけは得意だ。それ以外の運動神経はからっきしだけど。

つくづく、雪に愛されてるんだと思う。
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