苦恋症候群
何か物音がしたような気がして、俺はふっと意識を浮上させた。

どうやら、あれからいつの間にかまどろんでいたらしい。ひどい倦怠感の中、緩慢な動作で上半身を起こす。


ふと視線を下げると、雪妃が寝ていたはずの布団が綺麗に畳まれていた。

そして荷物ごと、彼女の姿が見えないことにも気づく。



「……ッ、」



枕元の目覚まし時計をとっさに確認すると、まだ明け方の5時半だ。

さっきの物音は、玄関のドアが閉まる音。つまりそれは、つい先ほど、雪妃がこの部屋を出て行ったということで。



「くそ……っ」



俺は厚手の上着だけ羽織って、ブーツに足を突っ込んだ。

外に出ると、まだ明るくなりきらない空が地面に積もった雪をぼんやりと白く浮き上がらせている。

ドアに鍵もかけず、慌ただしくアパートの階段を駆け下りた。
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