苦恋症候群
「雪妃……!」



昨晩積もったばかりの雪。その上に、真新しい足あとがある。

これを、たどって行けば──……。


ドン、という鈍い音がしたのは、俺がアパートの敷地を出て、左の道に足を踏み出した瞬間だった。

とたん、身体を襲った嫌な予感に。寒さのせいだけでなく身震いして、鼓動が速くなる。



「ゆ……」



そして、コンクリートでできたブロック塀の角を、曲がったところ。

視界に飛び込んだ光景に、俺は呆然と立ち尽くす。


ゆうべの雪は、狭いアスファルトの道路までも覆いつくしていた。

そしてその、純白の雪の中。じわじわと広がっていく赤い色の中心に倒れる、雪妃の姿。



「……ッ雪妃!!!」



彼女の名前を呼んで、横たわる身体にすぐさま駆け寄った。

周りには、彼女の持っていた荷物だと思われる物が散乱している。そして車のタイヤの跡が、道路の向こう側へと続いていた。
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