苦恋症候群
「そんじゃ、お疲れさまーっ」

「お疲れ~」



お酒が入ってイイ感じの雰囲気のまま、二次会会場のカラオケの前で同期たちと別れる。

二次会まで全員揃ってるなんて、いくら同期会でもそうそうないと思うんだ。ほんとにこのメンバーは仲良しだ。


三木さんはあたしとは家が反対方向で、珠里(しゅり)とマサキくんの3人で一緒に歩いて行く。

おしゃべりなふたりに挟まれて、大変そう。なんだかうんざりしているような後ろ姿をこっそり見送ってから、あたしも踵を返した。

こっち方面に向かうのはいつも、あたしとヤマくんのふたりきりだ。

あたしたちは家がわりと近くて、繁華街からはだいたい歩いて20分くらい。

よっぽど酔っ払ってるときは別として、そんな距離だから同期会の後は一緒に歩いて帰るのがほとんどだ。



「葉月、飲んでた量のわりに珍しく正気だな」



自分の腕時計に視線を落としながら、ヤマくんが言う。

……ほんとに、ヤマくんはよく周りのこと見てるな。

若干苦笑しながら、あたしは隣の彼を見上げた。
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