苦恋症候群
「まあ……元気っぽくしてた方が、三木さんもあたしのことで気に病んだりしないかなって」

「じゃあ、本当は元気じゃないんだ?」

「……元気だよ。ちゃんと、笑ってたでしょ?」



そう言って微笑んだあたしに、ヤマくんはなぜか微妙な表情。

フイ、と視線を外して、メガネのつるを押し上げた。


──ヤマくんは、同期の中で唯一、あたしの三木さんに対する気持ちを知ってた人。

だけど別に、それはあたしから話したわけじゃない。気づいたときには、いつの間にか知られていたのだ。……これだから彼の観察眼には頭が上がらない。

ヤマくんは、あたしの恋を応援するわけでも、反対するわけでもなく。いつだってただ客観的に、1歩離れたところから、アドバイスやフォローをしてくれていた。


そしてあたしにとっては、そんな彼の態度が心地良くて。

気持ちを知られているのをいいことに、いつも甘えさせてもらってたんだ。
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