苦恋症候群




乱れた髪を手ぐしで整えながら、ため息をつく。

あたしって、案外ちょろい女だったんだな。決定的な失恋の後のどうしようもないさみしさを埋めるために、同期と寝るなんて。


ちら、と隣の彼をうかがってみたら、ヤマくんはまだ眠っているようだ。メガネを外し、こうやって目を閉じていると、いつもより随分幼く見える。

……とりあえず、着る物どこだろ。

そう考えてあたりを見回してみると、ベッドの下にふたり分の衣服が見事に散らばっていた。

その光景を目に入れたとたん、ゆうべの情事がまた思い出される。こっそり恥ずかしくなりながら、自分の下着に手を伸ばそうとすると。



「……おはよう、葉月」



突然背後から声がしたから、思わず肩を震わせた。

おそるおそる振り返ってみると、仰向けになったヤマくんが、だるそうに首の後ろへ片手をやりつつあたしを見上げていて。

普段とは違う、色気垂れ流しなその姿。びくつきながら、あたしは胸もとを隠す布団をさらにたぐり寄せた。
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