苦恋症候群
「……ん……っ」



反射的に、顔を背けようとした。だけどそれよりも先にヤマくんの手があたしの顎を固定したから、それも叶わない。

深く口づけられながら、ずっと視線は絡まったまま。まぶたを閉じることもできずに、呆然と彼の瞳を見返した。


押さえられた手首は、びくともしない。あたしの意見なんか丸無視で、器用な彼の手はちゃくちゃくとあたしの身体を暴いていく。

このキスだって、無理やりされてるから拒否反応が出たっていいはず。なのにどうしてか、ひどくあたたかくてやさしいから、どろどろに蕩けそうになる。


……ああ、ダメだ、ダメなのに。

ちゃんと本気で、抵抗できない。



「ふ……、」



最後に下くちびるを甘噛みして、彼のくちびるが離れていく。

おそらく身体中真っ赤で、息もあがってしまっていて。そんなあたしを、ヤマくんが満足そうに見下ろす。
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