苦恋症候群
「は、その言葉……“ただの同期”に身体触られてこれだけ感じてるおまえにも、そっくりそのまま返してやる」



そのセリフを皮切りに、ヤマくんが本格的にあたしの身体を攻め始めたから。

あたしはもう、ただ彼の動きに合わせて声を上げるだけで、ちゃんとした言葉を紡げなくなる。


……あたし以外の同期は、きっと知らない。

ヤマくんの、冷淡そうにも見えるメガネに隠された瞳が──こんなにも、情熱的で獣じみていること。

その瞳に見つめられるたびきゅっと胸の奥が切なくなって、もう、抵抗なんてできなくなる。


散々鳴かされ、ぐったりと枕に沈んでいたあたしの耳元で、ヤマくんが低くささやいた。



「ほら、葉月。こっちに背中向けて、四つん這いになれよ」

「……ッ、」



悔しいけれど、ヤマくんのほとんど命令みたいなその言葉に、あたしは抗えない。

昨晩、身をもって──彼によって生み出される快楽を、知ってしまったから。



「……ふ、いい子」



震えながら素直に言う通りにしたあたしを褒めるように、ヤマくんはうなじへとキスを落とした。

予想外にやさしい仕草で、さらりと髪を撫でられる。


そうして、まるで逃げるのを許さないように。

後ろから、あたしの腰に両手を添えた。
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