Chocolate Fondue

一瞬の間。


次の瞬間、その場にいた全員が凍りついた。
近くのテーブルから、突き刺さるような視線が飛んでくる。
遠くの方から、呆気にとられて見ているウェイターの姿もあった。


香神は言葉もなく、うつろな目で三栗を見つめていた。


「ええっ?!」

「何、今の?」

「ちょっと、どうしたのよ、三栗君」


口々に周りのみんなが言っても、香神だけは何も言えず、ただぼんやりと三栗を見つめていた。

三栗は赤くなって、うつむくとかすれた声でつぶやいた。


「チョコレートが、ついてたから……」

「ああ……」


香神は、やっと言葉を発することができた。

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