パパは幼なじみ
「いらっしゃ…あら、徹ちゃんじゃないの。それに彼女さん!2、3日ぶりかしら?」
「こんにちは…」

元気な声で迎えてくれた徹くんのおばさん。今日は前きたときよりも店内がにぎわっている。

「こんにちは、おばさん。個室、空いてる?」
「ごめんねぇ、今日は見ての通り、混んでるのよ。普通のテーブル席でもい~い?」
「あー、えーと…」
「私は構わないけど…徹くんが大丈夫なら…」

“それなら”と、入り口から一番遠い席に案内された。注文したドリンクが運ばれてくるまで、私たちは無言だった。



「はい、コーヒーとオレンジ。ゆっくりしていってね?」
「ありがとうございます。」
「ブラック飲むなんて、大人になったわね、徹ちゃん」
「あ、ありがとう、おばさん」

徹くんのおばさんが席を離れてから、私たちは飲み物を交換した。

「この間きたときも間違えてたよね、徹くんのおばさん。」
「どうしても苦いものはダメでさ…でもオレンジジュースは子供っぽすぎて恥ずかしいよね…」
「ううん。なんか徹くんらしい。」
「僕が子供っぽいってこと?」

お互いに顔を見合わせて笑った。
でも徹くんは真剣な顔に戻った。

「この間は僕の話だったよね。だから今日は、君の話が聞きたい。」


ブラックコーヒーとオレンジジュース。温度も味も何もかも正反対に思える2つがテーブルに並ぶ様子は、なんだか滑稽に見えた。
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