まだあなたが好きみたい
窪川がわたしの手首をつかんだ。
不意を衝かれて菜々子はおっと背中を反った。
一呼吸置いて、できるだけ恨めしい顔で振り返る。
「……なに」
「……」
窪川は目をそらして押し黙った。
「はなしてよ。帰るって言ってるでしょ」
されど、なおも窪川の手は菜々子を捕捉したままだ。
それどころか、菜々子が抵抗すればするほど手首にかかる圧力が増している気がする。
引き結んだ唇、宙を凝視する視線は一点なのに、それがどこか泳いでいるように見えるのはどうしてだろう。
手が、熱い。
意固地で頑なな様子に、ひそかな期待が頭をもたげた。
「大声出すよ」
そう、口では言いながら、裏腹に覇気はなくなっていた。