まだあなたが好きみたい
二人とも一歩も譲らない。
その間にもどんどん気温は落ちてくる。風も出てきた。葉の落ちた枝の揺れる音が耳に寒い。
不毛なやり取りをつづける時間じゃない。
菜々子はかぶりを振り、
「もういいかしら。もうすぐ期末試験なのはあなたもそうでしょ? 早く帰らないと」
ない腕時計を指すような仕草をして見せると、窪川は不愉快そうに唇をひん曲げ、そっぽを向いた。
「助けなきゃよかった、おまえなんか」
「はいはい、そりゃあ悪うござんしたね」
と言いながら、早くも踵を返していた菜々子はそのまま背を向けて歩き出した――出そうとして、
「!?」
「待てよ!」