まだあなたが好きみたい
「なにをそんなに焦ってるの? そんなに黙っていれないワケはなに?」
「はあ? 焦ってる? 俺が? なんでだよ」
「わたしが聞いてるんだけど。それともなに、照れてるの? 照れてるからそんなに一所懸命になってるの?」
「無言に耐えられないだけだよ、俺は!」
「子供か」
「!!!」
素でこぼれた突っ込みに、彼はよく均された平地の上で、階段を踏み外したみたいによろめいた。
「るっせーな! ちげーよッ! 明らかになんか裏があるやつと和やかに道行きを楽しめっつー方が無理だろ! だからだ!」
いきなりうるさい。
「裏? なんの裏?」
空とぼけて菜々子は首を後ろに巡らせた。