まだあなたが好きみたい

なにせこいつはセックスが、三度の飯よりだぁい好きだからな。


「彼氏だったなら、当然、知ってるだろ?」 


器用に片眉を上げて眼鏡は聞いた。

匡は返答に詰まった。

確かに、否定はできない。

睦美は折に触れて俺に男女の接触を求めてきた。

でも俺はいつも遅くまで部活に時間を取られてばかりで休日もろくに構ってやれず、結局抱いてやれたのは一度きり。

何度か学校でも迫られて、でもそれは俺が頑なに拒否して譲らなかった。

とはいえもちろん俺も盛りで、その場の快楽に気持ちが揺らいだことはあるし、女に誘われてそれを受け入れないのはと男気に火をつけそうになったこともある。

しかし匡には何を置いてもバスケが一番だった。

バスケのことを考えれば、目先の不純なたのしみは我慢できた。

バスケを天秤にかければもう彼女の欲求など顧みるに値しなかった。

公の場で不貞をはたらけば、品行方正ならびに風紀紊乱の観点からお咎めをくらい、それはいずれ部全体にも波及するだろうと、監督直々の呼び出しで釘を刺されたことも、匡の理性を支える柱になっていた。

多分、そういうことに一番縁がありそうだから、ということだったのだろう。

それとも、監督は、彼女の中に抗えぬ常習性の影でも見えていたのだろうか。

監督は選手が恋愛することを、許しはしても、歓迎はしていないという話を聞いたことがある。

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