まだあなたが好きみたい
よく試合を見に来ていた睦美を監督は認識していて、
『おまえはエースでも、女と呑気に楽しんでいられるレベルじゃない』
と、いつだったかはっきり言われたことがある。
あのときはただの叱咤激励だと受け止めて、深く考えることはしなかった。
けれどあのときすでに、彼女の中に潜む異常な性癖を監督が見抜いていたのだとしたら。
だから遠まわしに別れろと言っていたのだとしたら。
だとしたら、推測でしかない監督の願いを最後まで匡は汲んでやれなかったわけだが、図らずも降って湧いた吉田の存在が睦美との間に溝を作って、結果的に別れることになったのは、ある意味怪我の功名だったのだろうか。
「睦美が高校に上がって目をつけた男がおまえだと聞いて、さぞかしお似合いのカップルだと思ったよ。類は友を呼ぶってな、まさしくこういうことを言うんだな」
シニカルな笑みに含むところを感じ、匡は総身がふるえた。
(こいつ、俺が中学でなにをしてたのか、……まさか知ってんのか?)
そういえば思い当たることがつい先ほどもあった。
おまえもこいつも薄汚いドブネズミ
睦美を、俺と迷わず同類に据えた表現に違和感を覚えた。
(あれは……そういうこと、だったのか)