まだあなたが好きみたい

「……なんか、反応が冷たいすよね、さっきから」

「だって、ただ立ってるだけでかっこいい人間なんて、ずるいと思うでしょ?」

「ああ、それは、まあ。でもそれっていうのはきっと窪川が人の何倍も頑張ってるっていう証だと思うし、もちろん、もって生まれたもんがちがうっていう感じも否めないけど。でもそれだけじゃなくて、あいつあれで普通の人がするみたいな悩み事とか葛藤とか、そういうのに振り回されてるとこもちゃんとあるんです。それ知ったときはなんか、ほっとしたーっていうか、親近感が湧いたっていうか、単にかっこいいだけじゃない感じが好ましくて。

だからかな、そう感じてあらためて窪川と接すると、どんどんあいつの意外な一面が見えてくるんです」

「意外な一面?」

「実はけっこう熱くなりやすかったり、チームメイトのことを陰でよく見てたり、ああ、女子の相談に乗ってやってるのを見たこともあったかも。窪川って、あんまり人のことを深く知ろうと思うタイプじゃないと思ってたから、マジな顔で相手とぶつかったり、真摯に話とか聞いてるとこ見ると、俺の勝手な思い込みだったなって」

「女子の、相談? 口説いてるんじゃなくて?」

「そ、そんなに顔引きつらせて言わなくても……。そうみたいでしたよ」


それは意外だ、と菜々子も思った。

女といえば玩具という認識であるはずの彼にとって、見返りなしで相談にのるとは思えない。

しかし夏原の話を聞いているとどうにもそうは思えないのは、話しているのが彼だからなのだろうか。

バスケには熱心で真面目ということは聞いていた。

もっとも、偏りすぎるせいで周囲と隔たりがあるとも聞いていたが。


(でもそれが、チームと温度差をなくすために使われたことなんか、あったの……あいつ)


人一倍熱心だから、人に厳しく、自分にも厳しく。

ついてこれないもの、自らを貶すものをそれ以上に試合で痛めつけていたのが窪川という男だった。

それはきっと、夏原が言うような、熱くなりやすい、という表現とは似ていても、内実はちがっていたように思う。

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