まだあなたが好きみたい
よほど寒さにふるえているように見えたのだろうか。
彼がわたしに親切にする理由………わからない。
友好の証…なんてありえないし、夏のあのやり取りから彼の性格上、見返りもなく施しをするとも思えない。
もったいないのでありがたく頂戴するが、正直、どう扱って良いものやら。
それにこれをわたしはどういう気持ちで受け取ればいいのだろう。
たとえば目が合うたびにいがみ合ってても実は誰もが認める名コンビ、みたいなマンガの中のふたりだったら、こういう不意打ちも、きらきらした青春のワンシーンになるのだろうけれど、
ただただ解せない彼の突発的な行動に菜々子は戸惑うばかりで……なんというか、ときめく段階を思いきり踏み外した気がする。
結局、彼は何をしたかったのか。
考えていると、目の前を中学生と思しき学ランの男の子が走っていく。
ともあれバス、と菜々子はホッカイロをコートに突っ込み、バス停への道を急いだ。