まだあなたが好きみたい
「隣のクラスの木野村ってひと。知ってる?」
「きのむら? 木野村……、ああー、あの目立つ人だ、そばかすの。けっこうイケメンだよね。すごいじゃん」
目立つのは造作の方か、それともそばかすか。
昨日は告白された場所も外も通じて薄暗かったのでそれほど気にならなかった。
あれ、と有正が小首を傾げた。常の不愉快な顔に輪をかけてやらしい笑みが浮かんでいる。
「てか木野村って水泳部じゃん?」
「そうだよ」
「そっちも今日予選会だよ。行かなくていいの?」
「彼女じゃないもん」
「ふーん?」
妙に耳につく声だ。
「付き合う気もないし」
「へっ? なんで? もったいない」
「なにを基準に勿体ないになるのかわかんない。あ、ここ空いてるよ」
言ってる傍から人並みに押し流れていきそうな有正の襟首を掴んで座らせる。
「もったいないったら、もったいない以外ないっしょ。木野村と付き合ったら一気に菜々ちゃんの株が上がると思うけど」