まだあなたが好きみたい
菜々子は隣の幼馴染みを一瞥して、
「あんたも安い男ね」
鼻先で笑った。
眼下、磨き抜かれたコートでは出場校の生徒がそれぞれアップと最終調整に忙しい。
いた―――。
目当ての人物を見つけて、菜々子はかすかに目を細めた。
その人の手から放たれたボールがきれいな弧を描いて吸い込まれるようにゴールに決まる。スリーだ。
絶好調! とばかりにガッツポーズを見せびらかすその人を周囲の仲間が小突いている。
屈託のない晴れやかな笑顔に、誤魔化しようのない胸の疼きを意識する。
そう。今日わたしは、
あのひとに話があってここへ来たんだから。
有正はきょとんとして、息を吐きながら肩をすくめた。