桜の木の下で-約束編ー



「和鬼さま、良く聞いて。

 YUKIの誕生会をしたくて、
 昨日、私達三人で
 デパートに買い物に行ったの。

 これは咲が、貴方の為に買い物をした
 誕生日プレゼント。

 これを買い物した後、
 咲はお手洗いに行くと言って
 私たちの傍から離れたの。

 何時まで経っても帰ってこない
 咲を心配に思って、
 司が探しに行ったんだけど
 そこには咲は居なくて、
 この紙袋だけが残されていたの。

 咲の行方は、今はわからないの」



咲が消えた?



ベッドの上、
体を起こして神経を研ぎ澄ましていく。





あばら家の時よりも、
ボクの気が集まってきている気がする。




意識をゆっくりと広げて、
咲の血を探っていく。




「和鬼君?」





一花の声を意識の向こう側で聞きながら、
ボクは咲を求め続ける。






……見つけた……。





「一花、咲を見つけたよ。
 ボクが助け出して見せるから」

「えぇ。待ってますわ。

 咲が姿を消して、もう二週間。
 梅雨明けもして、フローシアも夏休みに入りますわ」

「そうだね。

 咲の心が弱る、この季節に
 ボクは咲を一人にしてしまったんだね」



 
一花との会話の後、
部屋に駆けつけてきた咲久の気配を感じながら
ボクはベランダから、扉の方へと移動した。

 






……咲……






君だけは、
必ず守って見せるから。




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