桜の木の下で-約束編ー



暗闇に向かって声をかけるものの
桜の花弁、一枚を残すだけで
そこに和鬼は存在しない。





あれ?
和鬼じゃないの?






和鬼も居ない……?








そんな不安は、
私の精神状態を一気に不安定にしていく。







私、いらない子なんだ。







寂しさと孤独に手足が悴んで【かじかんで】
冷たくなっていく気がする。





お母さん……。


離れていても、
ちゃんと覚えてくれてると思った。



新しい家族が居ても、
ちゃんと『咲』って呼んでくれると思ってた。


声に出さなくても、
口だけでも動かして呼んでくれたら
それだけで十分だったのに。




お母さんの新しい家族を
壊したいわけじゃなかったのに。



ただ一言。

私が望み続けた名前すら、
呼んでくれなかった。


デパートで出逢った
あの人の新しい家族を見て思った。


あの子は、私が知らないものを
沢山持ってるんだって。



私、あの子に嫉妬してた。


だからあの場所から
消えたかった。


あの場所に居続けるのは、
あまりにも孤独すぎて、私自身が惨めすぎて。



居たくなかったから逃げたいと願った。






そのまま見てたら、お母さんを罵倒して、
あの家族をぐちゃぐちゃにしてしまいそうだったから
その場から立ち去った。



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