桜の木の下で-約束編ー

7.朱い朧月夜 -和鬼-



風鬼と紅葉に対峙して、
逃げるように狭間の世界へ戻ったボク。


その後も何度も、
風鬼と紅葉の存在と真実を追い求める。



友の名を語る存在。

真実を暴き、裁くのが
桜鬼としてのボクの役割。



今回の一件で気になるのは、
風鬼の傍に居て付き従う紅葉と言う名の少女。








「紅葉は
 ……待ってるの……。

 あの人を……。

 あの人が私だけの人に
 なってくれるのを」






紅葉と呼ばれるその少女が
何度も何度も同じ言葉を繰り返しボクに微笑むたびに
ボクの体は何かに
縛られたように捕らわれて力が抜けていく。


そんな日々を繰り返し続けたボクの時間は、
人の時で二週間と言う時が流れていたのだと、
神木の前で力尽きて倒れたボクを助けた一花は告げた。


二週間と言う月日が、鬼の時間ではどれほどに長く
人の世では、どれ程に早いものかをボクは知っている。


人の命は、砂時計の如く早い。






「和鬼さま、良く聞いて。

 YUKIの誕生会をしたくて、
 昨日、私達三人で
 デパートに買い物に行ったの。

 これは咲が、貴方の為に買い物をした
 誕生日プレゼント。

 これを買い物した後、
 咲はお手洗いに行くと言って
 私たちの傍から離れたの。

 何時まで経っても帰ってこない
 咲を心配に思って、
 司が探しに行ったんだけど
 そこには咲は居なくて、
 この紙袋だけが残されていたの。

 咲の行方は、今はわからないの」






自宅のベッドで意識を取り戻したボクが
一花より告げられたのは、
咲の行方がわからなくなったこと。


ボクが消息不明になった時間だけ、
咲もまた、行方が分からない。




咲が消えた?


ボクと咲は、
契りを交わしている。



契りを交わした存在の状態は、
手に取るようにわかるものなのに。




意識をゆっくりと広げたボクは、
咲の居場所を突き止めて、
瞬時に影を渡り始めた。

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