桜の木の下で-約束編ー






鬼の全てを
桜鬼に滅ぼされてしまう。






珠鬼の声は、
ボクを深く突き刺した。




ボクの敵は、ボク自身。






あの日、咲によって
解放されたはずの、
死を迎えたはずの
昔のボクは、
今も罪悪感に抱かれたまま
深い心の底に潜み続けてる。





それでも守り続けたい。




ボク自身が壊れてしまっても。



この両の手に届く
愛しい存在(もの)だけは
守り遂げたい。






鬼狩の剣が、
月の光を受けて反射する。








ふと見上げた空には……
朱い朧月夜【おぼろづきよ】が浮かぶ。










その月を見上げながら
ボクの心は紅い血を流し始める。






どれほどに求めても
交わることのない二つの役職。





どれほどに求めても
交わることが出来ない
桜鬼として任務。









誤解を解くことも出来ず、
交わるたびに孤独に突き落としていく
鬼の世界(ふるさと)の仕打ちに
涙を流すことすらも出来ぬまま今を歩み続ける。












……ただ……
大切なものを守りたい。












だから……
ボクは咲、ただ一人の為に
この力を振るう。









桜鬼神として、国主として、
決して許されぬと知りながら
人に……この剣を向ける。





咲を悲しませた、
その人を……解放するために……。



















紅い朧月だけが、
ボクの罪を
受け止めてくれるようだった。



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