桜の木の下で-約束編ー


『和鬼……。

 俺と同じように闇に蝕まれて自らを制御できず、
 苦しみ続ける同胞たちの魂を守ってやってくれ。


 俺たちは殺されるんじゃない。


 抱かれに行くんだ。
 国主と桜鬼神。

 沙羅双樹の大木に導かれて楽園に旅立つんだから』















……風鬼……。





映し出される景色に、
紅葉は静かに涙を流した。







我名は和鬼。

国主と桜鬼神、双樹を継ぐ者。


我民の安寧を厭い【いとい】その旅立ちを誘う。

……紅葉……。

汝が旅立ちを祝福しよう。
親友の元へ









桜吹雪に誘われて、桜鬼の奏でる琴の音に
意識を委ね国主が謡う揺りかご。





二つの双樹に抱かれて。












紅葉を腕に抱いて、
ゆっくりと旅立ちを見送ると
ボクは穏やかな笑みを携えながら、
ゆっくりと崩れ落ちた。









……咲……幸せに……。




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