桜の木の下で-約束編ー





咲の体の隣、足を投げ出して
腰をおろす。


赤みがさした咲の体は、
指先まで暖かくポカポカしていた。





『これで風邪をひかなくてすむね。
 ボクを見つけてくれて有難う』





穏やかな寝顔を浮かべる
咲を見つめながら、
神木が伝えたビジョンを
ゆっくりと辿っていく。




夕方の出会いから、
今までの咲との時間が
ボクの心を晴れやかに感じさせてくれた。





……咲……。






心の中、名前を呟きながら
そっと指先で感じる咲の頬。





柔らかな感触。

暖かな温もり。






だけど……それと同時に、
ボクが犯した罪が浮き彫りになる。









とっさとはいえ、ボクは断りもなく、
咲に口づけをしてしまった。



コントロールが出来ないほど、
突然起こってしまった出来事に
ボク自身が動揺してしまう。





そして、もう一つ。








ボク自身の鬼の気を了承もなしに
咲に与えてしまった現実。





鬼の気を人に与えること。


それ即ち、
-契(ちぎり)-。





同意のないまま
ボクは咲と契を交わしてしまった。




今も眠り続ける、
咲をゆっくりと見つめる。





目の前に居る少女は、
遠い昔……ボクが
心を寄せて思い続けた人にとても良く似ていた。


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