桜の木の下で-約束編ー
布団を引っ張り上げながら、
ゆっくりと暗闇に視界が慣れた頃、
ドアが開かれる。
「咲、起きた?」
「司……」
「咲、うちの車の中で意識失って倒れたの。
咲の家には今日は泊まらせるって
連絡しておいたから。
うちのホームドクターに、
家まで来て貰ったけど過労だってさ。
後は睡眠不足。
過労と睡眠不足が重なって、貧血になってたみたい。
何、眠れてないの?」
私のベッドサイド、
椅子を持ってきて、座り込む司。
「ごめん……。
最近、夢見が悪くて眠れないんだよね。
和鬼とも思うように会えないし」
「なるほどねー。
そんな不安が不眠を招いてるってわけか」
「あっ、一花が晩御飯作ってたからもうすぐ届くと思う。
それ、ちゃんと食べて寝なよ。
明日から三学期になるんだから。
冬休みの宿題も終わってるよね」
司……それは言わないで。
冬休み最終日にも残した、
大嫌いな教科がまだ四頁ほど残ってる。
「司ー、数学の問題集。
四頁だけ明日写させて」
そう告げた私に司は溜息をつきながら
了承してくれた。
持つべきものは頼もしい親友だ。
その後、一花先輩の手料理がテーブルいっぱいに並べられて
私は一花先輩の監視のもと、晩御飯を食べていく。
貧血になった私を気遣ったらしいメニューは
夜一食で食べきれる量をはるかに超えていた。
そのまま眠りについた私は、三学期の始業式の早朝
司の家の車で自宅まで送られて、
着替えを済ませて、鞄を持つといつものように登校した。