幼なじみと秘密の時間
祐希は、私の顎を片手で上に持ち上げた。


「え?」


「蘭、マジでスキだった。
最後に1回でいいから、キスさせて。
そしたら、諦めるからさ」


私は祐希の優しさに、ポロポロと涙が
こぼれてきた。
私に、泣く資格なんてないのに…。



私は、無言で小さく頷いた。





祐希は、しばらく私を見つめていたが、
涙を軽く拭ってから、ゆっくりとキスをした。




祐希の唇は、少し震えていた…。
優しい切ない…祐希との最後のキスだった…。





ゆっくりと唇を離すと、キツく抱き締められる。



「しばらく、このままでいさせて…」


「うん…」









そのうち、身体が離れると祐希が言った。



「これから、たまたま会っても
普通にしてよ。
俺は、蘭の味方だから」



「ありがとう…」



「あっ!和弥には、悔しいから1発殴りに
行くって、言っといて!!」



「分かった」



祐希は、笑いながら言った。





「じゃあな、もう行けよ」



「うん…祐希、本当に今までありがとう」




私は、深々と頭を下げる。



頭を上げると、笑顔の祐希がいた。




私は後ろを振り返り、ゆっくり歩き出した。






その姿を、祐希はずっと見ていた。













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