おくすりのじかん
立ち上がって 窓に近づくといきなり
後ろから正也に抱きしめられた。


「俺 何で祥子にしなかったんだろ」


「え?」


突然のことで体を固くした。


「俺は 祥子のこときっと好きだったんだと思う」


「な・・・何言ってんの?
酔っ払い?勘弁してよ」


お腹のところで組まれた腕をとろうとしたけど
力が強くて取れない。


「近くにいすぎて 恋だの愛だのってわかんなかった。
ただ こうやって違う女と家庭を持って
祥子といる時の安らぎがたまらなく心地よくて」


「浮気相手なら勘弁してよ。
またおとうさんになるんでしょ?」


「俺の人生はもう終わったよ
何でもうまくやって手に入れてきたのに
本当の幸せはつかめなかった」


「正也 ちょっとそれはひどいよ。
子供がいるんだよ・・・・・」


「わかってるって・・・・・
だから耐えてるんだ」



ずっと好きだった正也だったけど
私の中ではもう とっくに終わっていたことだったから


「祥子 俺を助けて」
正也はそう言うと 私の胸に手を伸ばした。
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