~D*A doll~
いつもはガヤガヤとうるさい校舎は、テスト最終日ということもあって人の影すら見えなかった。
教室を出たあたしと咲哉くんは無言でそんな廊下を歩く。
何か話さなきゃ、とは思うけれど話のネタが何も思い浮かばない。
もうすっかり暑くなった空気があたしに絡みつく。
それがさらに眠気を増しているようで咲哉くんどころではないほど、本当に眠かった。
ぼーっと歩くあたしの横で無言を貫いている咲哉くん。
チラリとその横顔を見ると、先生とは思えないような整った顔は前を見据えていた。
「……じゃ、俺はこれ届けなきゃだから。気を付けて帰れよ」
階段に差し掛かり、プリントを少し持ち上げた咲哉くんは上の階に行くそうだ。
それについていく元気があるわけでもなく、バイバイと手を振って階段を一段一段降りて行った。