~D*A doll~
校舎は意外に綺麗だった。
タバコの吸い殻も全然落ちてないし、ガラスも割れてない。
あれ?
最近の不良さんたちはお利口さんなのかな?
前の学校の方が進学校のくせにガラスも割れてたし、タバコはさすがに無かったけどお菓子のゴミとか普通に落ちてたのに。
そんなことをぼんやりと考えながらも、電話で聞いた通りに道を進む。
玄関から、右を曲がってその廊下突き当りっと…。
そこには職員室と書かれたプレートがあった。
そして、廊下の突当りをフトと見ると、大きな全身を映し出す鏡があることに気づいた。
…珍しい。
鏡の真正面に立ち、制服の軽い乱れを直し、髪を整える。
あたしの髪はこげ茶で今日はふんわりと巻いて、耳の下でツインテールで低く、緩やかにまとめている。
それで前髪をお気に入りのピンで押さえている。
こげ茶の髪はもともとの地毛。
人より少し色素が薄いみたい。
……母親の遺伝らしい。
もともとはストレートだけど、今日は気合を入れて巻いて来た。
鏡に映る自分の顔を見る。
大きく開いた綺麗な目。まつ毛も長く、鼻筋も整っている。で、何より小顔。
一言でいうと美人。
超かわいい。
別に勘違いってわけでも、うぬぼれてるってわけでも無い。
この顔だから相当男からはモテるモテる。
女だけどヤり放題。
もしあたしがここまで可愛くなかったら…今頃一人ぼっちなんだろうな。
可愛くなかったら誰も相手なんてしてくれないんだろうな。
……ま、今はまだ相手してくれてるからいいや。
可愛いから男たちはあたしを構ってくれる。
可愛く生んでくれたお母さんに感謝しなきゃ。
母親は…あたしに、これしか残してないんだから。
愛情も思い出も、なにも無いんだから。